わたし はな

 はなは普段、テレビにそれほど関心がないように見える。でも動物番組だけは好きで、幼いころはテレビの前のかぶりつきに陣どって離れなかった。再三、父しゃんから目を悪くすると注意され、いつの間にか、その特等席には行かなくなった。
 最近は、夜が更け、石澤典夫アナの「2355」の重厚なナレーションが流れるころ、はなの身の上に不可解な出来事が起きる。ずっと爆睡していたはずのネコの短い首が音もなく持ちあがり、テレビ画面にすっくと向き合うのだ。細野晴臣の下手くそな歌を聞いているのかいないのかわからないが、日めくりアニメは画面が動くからなのだろう、しっかり見ている。
 はなは、「ねこのうた」がいちばんのお気に入りだ。おれ(わたし)ねこのオープニング映像と音響がスタートすると、すみやかにソファーの所定位置に座りなおし、じっと耳を立てる。
 おやすみソングの「眠れねこねこ」には反応が今ひとつ、自分も眠くなり聞いていられないのかもしれない。ネコなので、その辺りで集中力が切れて静かにおやすみになる。それを見ている父しゃんも酔いが回り、その夜のテレビ鑑賞会はお開き。

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