後発性騒動

 今月に入りせわしない日が続いている。退職を控えているとはいえ、やり残した用件がこんなにあるはずないのだが。
 昨日、外回りがキャンセルになり一息ついたときのこと。右眼の状態が白内障手術の前みたいにぼやぼや。いよいよ調子悪い。忍耐のひもが切れた状態で、午後から休みをとって眼科へ行った。あいにく、その日の検眼の担当は男性の検査技師だった。この目をどうしてくれるんだとイライラしているので、彼とは口も聞かない。医師は、後発性白内障が目の中心部まで広がっているのでレーザーで治療しましょうという。それなら4月に来たときやってくれればよかったものを、と喉まで出てきたがこらえた。冷房のせいか、頭の後ろから背中、胸から膝にかけてゾクゾク寒い。瞳孔拡張剤を点眼され、四、五十分の間、極寒に震えた。
 濁った目の皮をはがすレーザー治療はあっという間だった。恐れていた痛みはぜんぜんない。それどころか、何をされたかまったくわからない。カンカンする響きなんて痛みに比べればどうということはなかった。涙目がおさまると、視界が鮮明になったのがまさに一目瞭然。頭の中でブスブスいぶっていた憤懣の煙はすっと消えてなくなった。
 その日の夜は、映画「花戦さ」を見る日だった。治療後すぐ、スクリーンの光に瞳をさらして大丈夫だったのかどうか。多彩な出演者の顔ぶれ。テーマは桜梅桃李、茶や花によるもてなしの心など、じつにシンプル。なので眠気はもよおさなかった。
 暇なネコ せわしいイヌにも 日々文句あり 猫史