猫介護

  父しゃんは、夜遅くまで一杯やりながら、テレビとグダグダ会話してなかなか寝ようとしない。なので、夜12時過ぎたら、はなの出番。はなは、仕事するとき、普段とはうって変わり、寡黙で厳しい。
「父しゃん!いい加減にしなよ」とベッドに追い立て、寝付くまで枕元で看視する。父しゃんは、たまに夢遊病者みたいに起き上がり、台所の冷蔵庫を開けようとするから目が離せない。
 真夜中には、ベッドから転げ落ちていないか、何度か点検する。床に寝ていたら、まず、息をしているかどうか、鼻穴に鼻をくっつけて確認し、それから大声で鳴いて正気を取りもどさせる。
 朝、目覚ましのベルが鳴る少し前に、はなは、枕元に待機するようにしている。うるさいベルの音をすぐ止めなきゃならないから。ベルが鳴ったら、肩をチョイチョイと軽くたたく。父しゃんはほんとに寝起きが悪く、すぐ起きたためしがない。なので、この前、顔を突っついたら、はなのことを暴力猫呼ばわりするようになった。せっかく介護してやってるのに。
 父しゃん! 言うことを素直に聞けない頑固な年寄りは、猫にも嫌われるんだよ。